REPORT レポート

悲願の新世界チャンピオン誕生!消耗戦を制し谷口完勝!

ウィルフレッド・メンデス VS 谷口将隆

●第6試合
WBO世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦

WBOミニマム級王者
- 17戦16勝6KO1敗 –
ウィルフレッド・メンデス(プエルトリコ)

WBO世界ミニマム級1位
- 17戦14勝9KO3敗 -
谷口 将隆(ワタナベ)(勝者)

前日会見で終始「挑戦者らしい戦いをみせる」と話していた谷口は2度目の世界挑戦を迎える。2019年2月の初の世界挑戦でビック・サルダール(比国)に判定で敗北。失いかけた自信を取り戻すように選手やトレーナーの意見を取り入れ、可能性の模索を尽くした。ディフェンシブさには高い評価があり中間距離も接近戦も制する万能型である一方、試合をコントロールする巧妙さをいかにみせつけられるかが世界戦には求められる。昨年12月に日本王座を獲得し、今年6月に初防衛に成功。満を持して2度目の世界戦を指名試合で迎える。ウィルフレッド・メンデスは、谷口の世界挑戦を退けたサルダールを制している。現在王座に君臨する頭脳派サウスポー。本線で3度目の防衛戦。懐の深さとクレバーさが光るメンデスのファイトスタイルを、谷口がどう踏み込み切り開くかが見所の一戦。

ウィルフレッド・メンデス VS 谷口将隆

サウスポーの谷口にとってサウスポー相手は本線が初対峙。上体を小刻み左右に揺らし、軽快なステップで右のジャブで距離を測る谷口。王者・メンデスは長いロングレンジの右ジャブ、ボディストレートで得意とする中長距離をとる。谷口の右ジャブに合わせるように左のかぶせ気味ストレートで、打ち取るタイミングをはかる。南米独特のしなるストレートに、谷口は左右にステップでまわりながらで様子を模索する展開。

しかし2R早々に試合は動く。重心を時折前に移しながら攻戦スタイルをみせる谷口。組み合う展開でもフィジカルの強さを見せショートフック、アッパーで接近戦も辞さないがメンデスもボディ、打ち下ろしを見舞う。組み付きからの離れぎわ、かぶせ気味の左ストレートでメンデスからダウンを奪う。早い展開に会場がどよめく。

ウィルフレッド・メンデス VS 谷口将隆

3R開始。ダウンをとったものの谷口は深追いせず、常に攻めの姿勢でプレスをかけ続ける。メンデスも突き刺すような右ストレートから左のかぶせストレートを放ち、引く気配は見せない。徐々にメンデスのストレートに左を合わせる谷口は突破口をつかみ始めたのか。

4Rに入り、メンデスのロングレンジをかいくぐり接近戦に打って出る谷口。組み合ってからお互いにダブルボディで削り合い、ショートフックを打ちおろす。しかし、常にロープを背負うのはメンデス。フィジカルの強さで削り合う勝負でもしつこく攻め続ける谷口。

5Rに入り、さらに谷口の距離をつぶしての近距離勝負。嫌がる様子を見せ始めるメンデス。谷口は離れたところからより上体を低く構えボディストレートを打ち込む。左右ステップで距離をとり、踏み込むステップインはさらに加速。ダメージがあるのか、メンデスの精度は撹乱されはじめる。
さらに6Rには組みつきの展開でホールドをとられ減点1。追い込まれる王者・メンデス。

ウィルフレッド・メンデス VS 谷口将隆

試合後半に入り、ゴング早々接近戦からの削り合いの展開に、メンデスの右ボディが谷口の脇腹に突き刺さる。しかし、谷口もリング中央で組み合いになっても頭を下げてメンデスにロープを背負わせる。谷口がボディを入れるとメンデスもすかさず打ち下ろし、ダブルボディで応戦。谷口のセコンドからも「我慢くらべ!」の声が飛ぶ。

9Rに入り、谷口はワンツーからの右ボディを叩き込む。接近戦で肩を使う巧みなポジション取りから繰り出すボディアッパーにメンデスは足を使って距離をとり、徹底的にサイドボディのガードをかためる。谷口の左ショートフックからの左ボディブローが刺さり、メンデスの体躯はあからさまな曲線を描く。序盤は精度が高かったメンデスのジャブの精細さは欠けて、谷口のジャブヒット数が上がる。メンデスの大ぶりが目立つ。

ウィルフレッド・メンデス VS 谷口将隆

迎えた11R、谷口の左ストレートをメンデスがかわそうとしたところに谷口の右のアッパーが顎をとらえる。メンデスがぐらついたところに、すかさず猛攻を仕掛け2度目のダウン。この好機を逃すまいとさらに左右の連打でたたみかけると、メンデスは防戦一方となりレフェリーが11R1分8秒で試合ストップ。以上の結果から、3度目の防衛戦のメンデスを下し谷口はWBO世界ミニマム級・新チャンピオンを奪取した。

(試合後インタビュー)
谷口「夢じゃないかなって思っています。メンデス選手は一歩遠いところで戦っていたので、これは詰めるかフェイントかけて入るしかないと思っていたので。フェイントかけるより、距離を詰める方が嫌がっていたのでゴリゴリでいきました。1~4Rはずっと距離をとって相手がその距離に慣れたところで動かしてやろうと意識がありました。(その展開で)ポイントがどっちにつくかは賭けだったのですが、相手の嫌なことをしようと思って。どうやって入るかはトレーナーと照らし合わせながらやっていたので、横から入ったり、前から入ったり、それで相手が嫌になって出てきたときに足を使ってジャブを打ったりとか。本当に練習通りが出ましたね。今回のテーマだった挑戦者らしくっていうのを意識して、(攻撃で相手が)目が飛んでいたのがわかったので、出られましたね」

●第5試合
55.0㎏契約8回戦

- 2戦2勝2KO –
武居 由樹(大橋)(勝者)

- 3戦2勝1KO1分 –
今村 和寛(本田F)

元K-1王者・魔裟斗から「鉄の拳」とお墨付きの拳を持つ武居由樹の3戦目。K-1王者からボクシング転向で大注目を集める中、現在2戦2勝、全1RKOと波にのる。対する今村は2020年11月に行われた“浪速のジョー”辰吉丈一郎の次男・辰吉 寿以輝戦以来のリング。前戦では2回偶然のバッティングで負傷引き分けと無念に終わったが未だ負けなし。好戦的なファイトスタイルで武居を制し、話題を一気にさらうのか。それとも、スピードを駆使する武居がさらなる大波にのるか?

1R。スピードあるジャブ、ストレートで距離をはかるサウスポー武居。対するサウスポーの今村も前手の右を揺らしながらフェイントをかけ好機を伺う。飛び込み気味の右で組みあいになり、もつれから今村がバランスを崩してスリップ。武居は左ジャブで距離をつめ、返しの右フックが今村の顔面をとらえ、たまらずクリンチ。武井は一瞬の隙を逃さず右フック、左アッパー、右フックの連打で今村をマットに沈めた。これで武居はデビュー3戦3KO、全1RKO勝利の記録をつなげた。

武居由樹 VS 今村和寛

(試合後インタビュー)
武居「足立区のパ、あ、大橋ジムの武居です。すみません、間違えました(古巣ジムがPOWER OF DREAMだったため)。3戦して3KOできたので、ここからが本当のスタートだと思っています。チャンピオンになるまでも、なってからも気を抜かず頑張っていきたい。(今村選手は)前にくる選手だったので冷静に対応しようと思ったが倒しに行っちゃいました。」

恒例となった八重樫東トレーナーからの試合後の評価は両手で丸の評価をもらった。圧倒的な劇的勝利を見せつけ、K-1からの黒船として注目を浴びる武居選手にさらなる注目が集まるのは必至だ。

●第4試合
試合58.5㎏契約 8回戦

- 3戦3勝3KO -
松本 圭佑(大橋)(勝者)

- 22戦12勝4KO10敗 –
荒木 貴裕(JB)

中学生の頃から“ミライモンスター”とメディアでも取り上げられてきた松本圭佑。トレーナーは父親でもある元OPBFフェザー級王者・松本好二氏。アマチュアでの実績を引っさげプロデビュー。3戦全勝だが1戦目で初回ダウンを喫し、2戦目も危ないシーンが目立った。3戦目は128秒殺と圧倒的KO劇をみせたが、4戦目の戦いはいかに? 対戦する荒木貴裕はここ3戦KO負けと連敗。しかし、ここで期待の逸材に黒星をつけることができれば一気に浮上する。逆転に懸ける。

1R。長いリーチと高いガードで懐深くゆっくりプレスをかける松本。荒木はサイドステップを駆使し前体重で好戦的なスタイルから大ぶりの左フックを放つが、松本はバックステップでかわす。ガードがかたい松本に距離を詰めたい荒木はガードをかためて懐に潜り込もうとするが、松本の射抜くようなジャブ、ストレートが主導権をにぎらせない。ラウンドを追うごとに攻撃が交差するようになり左右フック、左ボディを松本が繰り出せば、荒木もワンツー、ボディで応戦。荒木はボディから打ち崩したいが松本はステップバックで華麗に避ける。

松本圭佑 VS 荒木貴裕

4Rに入ると、荒木は上下に体躯を揺らしながら接近戦からの離れぎわの右ストレートを放ち、松本の顎が一瞬上がる。接近戦に持ち込みたい荒木の打ち終わりに松本は右の打ち下ろしを見舞い、さらに荒木は右ストレート、左フックのコンビネーションの交錯で両者引かぬ展開。しかし、的確な攻撃が冴える松本は距離が離れた一瞬を見逃さず荒木のフックに合わせて、ひっかけるような右ボディを放つ。蓄積した被弾からか荒木の動きが鈍くなり、左右のフックなどの大ぶりが目立つ。松本はその間に狙いを定め、荒木の顔面にワンツーを打ち込む。荒木は一歩下がり体勢を持ち直すが、すかさずワンツーを叩きこまれ荒木は真後ろに倒れる。レフェリーがかけより、松本が5R56秒TKO勝利の完勝をおさめる。

●第3試合
スーパーバンタム級8回戦

- 5戦4勝3KO1敗 –
石井 渡士也(REBOOT) (勝者)

- 21戦10勝1KO10敗1分 -
藤岡 拓弥(VADY)

井上尚弥のスパーリングパートナーも務める石井渡士也。超攻撃型スタイルでKOを築くのか。一方の鋼のゾンビファイターこと藤岡拓弥は打たれ強さを自負する。相手の嫌がるボクシングを徹底的に行い、プレスをかけながら自分のペースに引きずり込む。スタイルの違う両者がみせる展開とは?
藤岡はスピードあるジャブ、ワンツーで序盤から藤岡の顔面をとらえていく。直線的な動きと飛び込みながらの左ジャブで終始ペースをにぎる。藤岡はガードを徹底しながら前進し、接近戦ではフィジカルの強さを活かしダブルボディを放つ。スピードで上回る石井の攻撃の打ち終わりを狙うものの、藤岡は一歩とらえられず。石井はステップを巧みに使いながらジャブ、ボディ、左右ステップから藤岡を確実にとらえていく。明らかにダメージが蓄積している藤岡だが、プレスの強さはゆるめず常に前進。試合中盤を過ぎると石井の一方的な展開に。藤岡のプレスに石井がロープを背負う展開でもステップでかわし、応戦を許さない。しかし、突破口を開けない石井は最終ラウンドに怒涛のコンビネーションで追い込むものの、藤岡も最後の力を振り絞り左右フックで応戦する。判定は終始試合をコントロールし、的確にポイントを取った石井の3-0での完勝。判定3-0(79-73、80-72、80-71)

石井渡士也 VS 藤岡拓弥

●第2試合
フライ級4回戦

- 4戦2勝2KO2敗 -
永里 翔(レパード玉熊)

- 5戦2勝2KO3敗 -
梶谷 有樹(八王子中屋)(勝者)

アメリカ生まれの永里。梶谷はアメリカ遠征でアメリカ仕込みのサウスポーの対戦。
高いガードとゆっくりと歩くスタイルの梶谷に対し、永里は右回りに動きサイドからの左ボディストレート、左右のボディフックを決める。リーチで勝る梶谷は打ち終わりを狙い、中長距離からのかすめるようなボディと伸びるストレートボディを叩き込む。ラウンドを追うごとに永里のガードが上がったところに梶谷のアッパーが連打で入り、アッパーからのボディで永里の体躯が曲線を描く場面が見られる。2R。梶谷のフックで永里ダウン。あとがない永里は最終ラウンド、プレスを強めて接近を挑む。顎を捉えるアッパーが互いに入り顔がうくシーンが見られた。結果は2Rのダウンと的確なボディとアッパーでポイントをとった梶谷の判定勝利。判定3-0(38-37、38-37、39-36)

永里翔 VS 梶谷有樹

●第1試合
Sフェザー級4回戦

- 3戦2勝2KO1敗 -
テール上滝 (上滝)

- 1戦1勝1KO -
高井 開輝 (T&T)(勝者)

夢を諦めきれずに2020年12月に復帰したサラリーマンボクサー・テール上滝と、現役高校生ボクサー・高井開輝の対戦。身長差あるテール上滝に、高井がかいくぐってどう攻略するか。試合前半はお互いに距離の探り合いで静かな立ち上がり。高井が時折ボディからの左フックを見舞うが決定打にはならず。中盤、接近戦から互いにサイドのボディ攻撃からクリンチになる展開が見られる。リングをまわる上滝に対して、高井の伸びる左が顔面を捉える。上滝はストレートからの左フックで高井の側頭部をかすめるがこちらも決定打にはならず。お互いに決定打にかけたが終始攻め続け、ポイントをとった高井の判定勝利。判定2-0(40-36、39-38、38-38)

谷原凌 VS 西口享佑

著者プロフィール

たかはし 藍(たかはし あい)
元初代シュートボクシング日本女子フライ級王者。出版社で漫画や実用書、健康書などさまざまな編集経験を持つ。スポーツ関連の記事執筆やアスリートに適した食事・ライフスタイルの指導、講演、一般向けの格闘技レッスン等の活動も行う。逆境を乗り越えようとする者の姿にめっぽう弱い。
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