REPORT レポート
全ラウンド激闘!
第5試合
日本スーパーバンタム級王座決定10回戦
日本スーパーバンタム級1位
田村亮一 (JB SPORTS)
22戦15勝(7KO)7敗1分
勝者
日本スーパーバンタム級2位
古橋岳也(川崎新田)
40戦29勝(16KO)9敗2分
約3年ぶりに元王者同士が再び拳を交えた。前日計量で田村はリミットでクリア。古橋は300gオーバー、1時間後の再計量をリミットでパスした。お互いの持ち味は一歩も下がらぬ突進力と打たれ強さ。前試合を競り勝ったのは古橋だった。その後、日本王者の座に。2度の防衛の末、今年6月に元WBC世界バンタム級暫定王者・井上拓真に破れ陥落。井上がタイトルを返上し、この度両者の激突が実現した。リベンジを果たしたい田村との接戦を退け、2-1の判定で、古橋が日本スーパーバンタム級王座に返り咲いた。
激しい打撃戦になることは予想された。しかし、想像以上だった。
ゴング開始早々、田村は体勢を低くして積極的に前に出た。ワンツーからのフックが古橋をすぐさま捉えた。両者の並々ならぬ気迫は会場を飲み込んでいった。
ジャブの差し合い。古橋も応戦。サイドのボディからのフックは田村の顔を何度も揺らした。
1ラウンド終了時には古橋の有効打で田村は左目の端をカット。
ゴングが鳴るたびに怒涛の連打で仕掛けたのは田村だった。様子を見る時間はお互いに一切見られない。10ラウンド戦い抜くスタミナの心配をする素振りもない。前に出続けて近づけば必要にボディを攻め抜く田村。すぐさまサイドにまわり、回転力を上げてアッパーで田村の顎を打ち上げ、ボディまでコンビネーションをまとめる古橋。田村にロープを背負わせ、連打で何度もヒットを奪うが倒れない。
両者一歩も譲らぬ展開。
5ラウンドのオープンスコアシステムでは、二者が48-47で古橋、一者が48-47で田村を支持した。手数は田村、ヒットポイントは古橋といった印象か。
採点を聞いてからか、6ラウンドに入ると田村が息を吹き返し、ボディ、フックを叩き込んだ。足を使い、接近戦だけでなく、中距離から強打を浴びせた。古橋が上下打ち分けるコンビネーションを叩き込めば、田村がさらに上回る手数で打ち返す。永続的に行われる両者の激戦に会場のボルテージは最高潮に達した。
9ラウンドに入っても田村の手数は落ちることはなかった。細かいジャブからボディ、ストレートで古橋の動きを制する場面が何度も見られた。しかし古橋も引かない。左フックで田村の顔面を揺らせば、反撃をウィービングでかわしたところに右のオーバーフック。確実に田村の体力を削っていった。しかしラウンド終了時の古橋の顔面には腫れが見られ、左目の上をカット。
最終ラウンドはさらに激しさを増した。古橋の渾身のフックが田村に何度もヒット。会場は沸いた。田村は下がらない。相打ち上等の打ち合いを何度も演じてみせた。ようやくゴング。二人の激闘に終止符が打たれた。
結果は2-1(96-94、96-95、94-96)のスプリット判定によって、古橋が再び日本スーパーバンタム級の座を手にした。
リング上の第一声で古橋は前日計量のミスを詫びた。一度手放したベルトを肩にかけながら「応援してくれる人たちのためにベルトをとりたくて」と会場を見渡した。激闘を振り返り「本当に疲れました。(今後は)まずは国内。古橋強いなって思ってもらって、その先へ行けたらと思っています」と述べた。同級3位で指名挑戦者となる石井渡士也がリング上に上がり「35歳より21歳の方が強いので、ぶっ倒してベルトを取りたいと思います」と宣言。古橋はベテランの貫禄からか「とにかく休みたいです。しっかり休んで、やっぱりボクシングが好きなので、そのモチベーションで石井渡士也選手に挑戦したいと思います」と勝利した安堵と意気込みを表明した。
アマチュア10冠の今永がデビュー以来、3戦連続KO勝ち
第4試合
62.0kg契約8回戦
勝者
今永虎雅(大橋)
3戦3勝(3KO)
ロイ・スムガット(フィリピン)
27勝14勝(7KO)12敗1分
アマチュア10冠の今永がプロ3戦目を迎えた。デビュー以来連続KO勝利と来年は海外戦を視野に入れているだけに、今回もKO勝利は必須。アマチュア126戦のキャリアと177センチの身長のリーチを生かした強打でロイをどうやって仕留めるのかが注目された。
サウスポー同士、ジャブを突きながらサークリングして様子を伺うロイ。今永は安定した構えのままロイを静かに迎え撃った。先手はロイ。今永との体格差を警戒して大振りで前進。今永は冷静にロングジャブでロイの動きを止め、何度も顔を跳ね上げた。
2ラウンド目には今永の右フックがヒット。ロイの体がコーナーまで飛びダウンを奪った。勢いを失わないロイに、緩急をつけた攻撃でプレスを強めて強打で追い詰めた。
今永のパワーにジャブ、ストレートで近づきクリンチでしのぐロイ。今永もジャブがヒットし優勢は確実だが決定打がない。ロイも距離をとってはボディストレートを放つなど仕掛けていた。
6ラウンド、右にステップで回り込み、ロイも主導権を渡さない。今永は高速のワンツー、ボディのコンビネーション、さらにプレスを強め、ロイが右を振ってきたタイミングに左のストレートを放った。ロイがダウン。レフェリーのカウントでも起き上がれず、試合終了。
今永が6ラウンド1分25秒KO勝利。3戦全KO勝利の記録をのばした。
試合後に今永は「倒そう、一発で終わらせようと思っていた。ボクシングの能力は1ラウンドで負けていないと思ったが、全てタイミングが合えば倒そうかなと思っていた」とKO勝利を喜びつつも、その表情は晴れやかではなかった。解説席にいた先輩の武居から「あまりダメージがなさそうなので、明日から朝練は大丈夫ですか?」と質問されると笑顔になった。「世界を目指して、まだまだ実力はこれから伸ばしていくので応援よろしくお願いいたします」と今後の目標を高らかに宣言した。
第3試合
53.0kg契約8回戦
勝者
今川未徠(JB SPORTS)
18戦13勝(4KO)5敗
高木裕史(E&Jカシアス)
17戦6勝(2KO)10敗1分
2017年全日本新人王を奪取した今川。木更津で育ち氣志團に続くスターを目指す。対する高木は修士号を持つ異色のインテリジェンスボクサー。来年3月にボクシング定年の37歳を迎える高木は、もし、この試合でKO負けをすると規定によって3ヶ月間試合ができないため、必然とボクサー人生に終止符が打たれる。是が非でも勝利を手にしたい高木と、圧倒的な差を見せつけたい今川。
ゴング早々、今川のスピードが冴えた。高木はゆらりゆらりと上半身を揺らしながらも小刻みなステップで今川との距離をつめた。まだ硬さが残る印象。スピード、技術は今川が一枚も二枚も上手。高木の攻撃をもらうことなく、ジャブ、アッパー、ボディを絡めたコンビネーションを全てヒットさせた。
しかし被弾を重ねても高木は愚直に前に出て、手を出し続けた。今川も困惑からか見切っていた攻撃をもらう場面も。技術で上回る今川を、高木のがむしゃらさが飲み込んでいった。序盤は今川がいつ高木を倒すか期待していた会場も、いつしか高木が立ち続けることを望む空気に変わっていった。渾身の力を振り絞った高木が怒涛のラッシュを仕掛ける場面を作り出すと、会場は歓声に包まれた。打撃戦の末、ダメージの蓄積が著しくなったところでレフェリーが高木の体を抱き抱え、試合を止めた。7ラウンド2分55秒。今井のTKO勝利。
敗れはしたが観る者の心を揺さぶるボクシングを見せてくれた高木。両脇を抱えられながらリングを後にする姿に、会場からは万雷の拍手が送られた。
第2試合
フライ級8回戦
富岡浩介(REBOOT.IBA)
9戦6勝(5KO)3敗
勝者
エスネス・ドミンゴ(フィリピン)
20戦18勝(10KO)2敗
日本人キラーの異名を持つエスネス有利の前評判をくつがえすと公言した富岡。初のA級戦を迎えた。
その言葉通り、研究してきたことがわかる立ち上がりだった。軽やかなステップと高速ジャブでタイミングを測るエスネスに、富岡は入り際に合わせたジャブ。ハードヒッターのエスネスの右ストレートが伸びてくるが、サイドに回り込んで致命打を許さなかった。2ラウンドには富岡のマウスピースが落ちて試合が止まるシーンも。エスネスのノーモーションのストレートをもらう場面もあったが、ワンツー、左ボディで応戦。動きを止めた。ストレート、フックの連打でロープに追い詰め、エスネスがあわやダウンと思われる展開をみせた。流れは一気に富岡に向いてきた。
4ラウンドに入ると、エスネスの反応は確実に鈍くなっていた。ついに富岡のワンツーがエネシスをとらえダウンを奪った。さらに追い討ちをかけようとしたところ、再び富岡のマウスピースが落ちて試合が中断。試合再開。するとエスネスは富岡のストレートのタイミングに合わせ、渾身の右フックを放った。その一撃が富岡の顔面を撃ち抜いてダウン。立ち上がるが足元は定まらず、レフェリーが試合を止めた。4ラウンド2分21秒、エスネスの大逆転TKO勝利。呆然とする富岡と陣営。試合は最後まで何が起こるかわからない。エスネスはリングで飛び跳ねて勝利を喜んだ。
第1試合
ライト級8回戦
パラミン・セーンパック(タイ)
16勝10勝(8KO)6敗
勝利
湯川成美(駿河男児)
7戦7勝(6KO)
「バチバチの打ち合いをする」と宣言した湯川。一方で微笑みの国・タイから来た18歳のパラミンもおだやかな表情で同じくKO勝利を口にした。その言葉通り、試合開始から積極的に速いジャブ、フック、長いリーチを生かしたボディを打って出た。ガードを固めて圧を強めるのは湯川。ガードの隙を打ち抜くようにパラミンのアッパーが時折、湯川を捕らえた。
湯川もダブルフック、ボディと着実にパラミンを削っていった。2ラウンド、残り10秒のタイミングで互いの大振りなフックが空を切り、その音と迫力に会場がどよめいた。
3ラウンドは、湯川の全てのジャブがパラミンの顔面にヒット。苦し紛れにウィービングでタイミングを図りながらアッパー、フックで応戦するパラミン。湯川はプレスを強めてパラミンをロープにつめて、ガードが下がった瞬間に左フック。パラミンからダウンを奪った。レフェリーが試合を止めて、3ラウンド1分46秒、湯川がTKO勝利を手にした。7戦全勝6KOと無敗記録を伸ばした。
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