REPORT レポート

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第6試合
62.0kg契約10回戦

岩佐亮佑(セレス)(勝者)
32戦28勝(18KO)4敗

ゼネシス・カシミ・セルバニア(カシミ)
38戦34勝(16KO)4敗

岩佐、セルバニアの顎を打ち砕き再起戦をKO勝利

岩佐亮佑 VS ゼネシス・カシミ・セルバニア

ボクシング最終章「負けたら引退」と公言する岩佐。しかし、再起戦は試合前から波乱の連続だった。
2021年4月、世界2団体統一スーパーバンタム級王者アフマダリエフ(ウズベキスタン)に5回TKO負けから1年半ぶりの試合。元IBF世界スーパーフェザー級王者は「このままフェードアウトしたくない」と階級を上げてフェザー級で挑むはずだった。しかし、ゼネシスが「体重が落ちない」との理由で契約体重が59キロ、62キロと変更になった。挙げ句の果て、前日計量でゼネシスは62.6キロと600グラム超過。再計量も拒否した。試合は当日計量で64キロ以下の条件で成立することになった。

振り回された岩佐も前日計量でまさかの250グラム超過。2回目の計量でパスをした。結局、当初のフェザー級契約体重(57.15キロ以下)から約5キロ、3階級分の体重差となってしまった。ゼネシスは世界戦経験者であり、井上尚弥のスパーリングも務める実力者であることからも、体重差は大きく影響することが予想された。

当日18時に行われた計量でゼネシスは63.75キロで規定をクリアした。

岩佐亮佑 VS ゼネシス・カシミ・セルバニア

岩佐は試合前から今回の事態に憤りながらも常に冷静だった。リングインの際も4年半ぶりの凱旋試合に多くのファンへ手を振りながら入場した。ゴングが鳴るとサウスポーの岩佐は伸びるジャブで距離を測った。「イーグルアイ」の異名を持つだけに絶対的な距離感が岩佐の持ち味だ。ゼネシスのガードの上から右フック、隙をついて右アッパーを放ちプレッシャーをかけ続けた。対するゼネシスもガードを固めながら小刻みに体を揺らし、プレスをかけた。

2Rに入っても岩佐はジャブとボディストレートを基軸に主導権を渡さない。ゼネシスは重いワンツーを放つが岩佐は的を絞らせないよう右に周って距離をとった。逆転を狙える一発を持つゼネシスだけに油断はできないが、手数と有効打では岩佐が有利だ。

強引にいきたいゼネシスは前進しながら、打ち終わりを狙った大振りのダブルフックを打った。冷静に見極める岩佐はバックステップで距離をとってかわす。変わらずガードが固いゼネシスだが、岩佐はガードの上からでもジャブを放ち続け、胴囲に隙があればすかさずボディストレートから顎を打ち抜く。一発狙いのゼネシスの手数は少なく、岩佐のコンビネーションに反撃の手が出ない。

ゼネシスは4Rに入ると距離を縮めてフック、アッパーを狙った。額を合わせながらの接近戦で一歩も譲らない両者。岩佐はゼネシスのガードをこじ開けるように、アッパーを連打。三発目でゼネシスの顎が宙に上がり、ゼネシスはキャンバスにお尻をつきダウン。呆然としたまま、10カウントでも立ち上がれないゼネシスにレフェリーが試合を止め、4R1分48秒、岩佐のKO勝利となった。

岩佐亮佑 VS ゼネシス・カシミ・セルバニア

試合後、岩佐は「皆さん本当にご無沙汰しております。4年半ぶり。海外の第一線で戦ってきて、前回負けちゃって。(今回は)デビューの時から応援してくれている人たちの前で試合ができてうれしく思っています」と喜びを語った。
体重超過については「怖かったですよ、57キロで急遽契約体重が変更になり。プロスポーツでいろいろなことがあるけれど、皆様のおかげで勝つことができました」と複雑な心境も吐露。最後に「もちろん、この試合で勝っても負けても引退の文字もありました。(フェザー級の)世界の層は分厚いのですぐにタイトルにいけるとは思っていませんが、目の前の扉が開いたので戦いにいってきます」と宣言した。最終章の初戦を思わぬ形で濁された岩佐だったが、再び世界戦線に名乗り出るための一戦を完封で締めくくった。

岩佐の復活と共に、今回の契約体重の経緯については「終わり良ければ全て良し」で片づけてはいけない。「勝って良かった」の他に「無事で良かった」が付随するようでは、ボクシングが競技として成立していないことを意味しているからだ。近年、計量における体重超過の言葉を目にする事態が多発している。ウエイト管理を徹底すると共に、超過した際の対応を今一度議論する必要があるのではないだろうか。

第5試合
OPBF東洋太平洋フライ級タイトルマッチ12回戦

ジーメル・マグラモ(フィリピン)
29戦26勝(21KO)3敗

桑原拓(大橋)
12戦11勝(7KO)1敗(勝者)

OPBF初挑戦の桑原、王者マグラモに完勝

ジーメル・マグラモ VS 桑原拓

スピードスターの名の通り、クイックネスとハンドスピードが持ち味の桑原。昨年7月、8戦全勝のまま日本タイトルに挑み、日本同級王者ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)に10回TKO負け。「全ての自信を失った」と語った桑原は、今年3月に再起戦で勝利を収め、7月と2連勝と復活。今回は2度目のタイトル挑戦で、初めてOPBF東洋太平洋フライ級に挑む。

桑原は「前半にペースを奪った方が試合をうまく運んでいく。最初のペース争いに集中していきたい」と展開を予想していた。一方のマグラモは2020年11月に中谷潤人(M・T)と空位のWBO世界フライ級王座を争うも8回TKOで敗れ、昨年OPBFを獲得した。前日計量でマグラモは900グラム超過、2回目の計量でクリアした。

試合開始、一発目のジャブから桑原のスピードは冴え渡っていた。ノーモーションのストレート、ジャブの打ち合いでも桑原が制し、会場からもどよめきが起こった。マグラモが大振りの左フックを見せると、軌道を読み切り左フックを合わせ、相手のバランスを大きく切り崩す場面も見られた。今回は公開採点制度、オープン・スコアリング・システムを採用。4R、8Rで採点の途中経過を公開する。4Rまで39-37、40-36が二者と桑原を支持。桑原は宣言通り前半をリードした。

採点を聞いたマグラモは前に出た。プレスをかけ続けるが桑原は足さばきで攻撃をかわし、大きな被弾は見られない。フィジカルの強さに定評があるマグラモだが、ここまで脅威を感じるシーンは見当たらなかった。スピード、テクニックでは桑原が一枚上手か。
相手を測定しきったのか、6Rに入ると桑原の力強さが増した。マグラモもワンツー、ボディ、飛び込みの左フックで応戦するが、桑原のリズムを止めることはできない。

ジーメル・マグラモ VS 桑原拓

桑原は7Rに右フックの打ち下ろしを連続でヒットさせると会場は沸いた。それでもマグラモは王者の意地か、打たれ強さか、前進した。
8R終了後、79-73、78-74が二者で桑原を支持する。圧倒的な試合運び。後半になっても相手の攻撃をよけて打ち、ポジショニングを変えて高速ジャブ、フックを華麗に決めた。被弾したマグラモは体が流れ、ダメージの蓄積が見てとれた。11Rのゴング間際、プレスで追い続けたマグラモは桑原をコーナーに追い詰め、フックのコンビネーションを連打すると歓声が上がった。最終ラウンドまで桑原はスピード、タイミング、距離において勝っていた。
判定は116-112、117-111が二者の3-0で桑原がマグラモを下し、新OPBF東洋太平洋フライ級王座を奪取した。

リング上で時折声を詰まらせながら「去年この場所で日本タイトルマッチやって、(負けて)自信とか全て目の前が真っ暗になった。こうして大橋会長(大橋秀行大橋ジム会長)にチャンスを作っていただいて、後がないという重圧の中で今ここにベルトがあってホッとします」と述べた。続けて「(同門)井上尚弥選手からスパーリングパートナーとして指名いただいているので、4階級に添えられるように頑張りたいと思います」と12月13日に東京・有明アリーナでポール・バトラー(英国)と4団体統一戦を行う井上尚弥のスパーリングパートナーを務め、世界挑戦に向けさらに磨きをかける抱負を口にした。

第4試合
スーパーバンタム級8回戦

池側純(角海老宝石)
5戦3勝(1KO)2分

石井渡士也(REBOOT.IBA)
8戦6勝(4KO) 1分1敗

判定ドロー

サウスポースタイルから繰り出される左ストレートが武器の池側。アマチュア時代、大阪商業大学ではボクシング部主将を務め、その戦績は66戦51勝15敗。同大学出身のWBAライトフライ級スーパー王者の京口紘人とは先輩後輩の仲である。石井は「怪童」のニックネームで日本ユース王座獲得後、4戦目の2020年石田匠(井岡)に判定で破れプロ初黒星、昨年の再起戦では南出仁(セレス)にTKO勝利を収めている。

池側は身長172センチ、一方石井は162センチと身長差が10センチもある。池側はその体格差を活かし、序盤からジャブを突き、石井のワンツーに合わせて左アッパーを繰り出した。石井が懐に入ろうとすれば出鼻に合わせ、ジャブで封じて左ストレートの作戦が功を奏した。左を警戒した石井に、フェイントで逆に右のアッパー、ワンツーと巧みに繰り出した。一方石井はガードを下げながら攻撃スタイルに切り替え、ワンツーから右のアッパーで活路を切り開いた。

池側純 VS 石井渡士也

4R、プレスをかけ続ける石井のワンツーが池側の顔面にヒット。池側も応戦。ここまでのダメージもあって石井に鼻血が見られた。中盤に入ると互いにスピードを上げた。中長距離を制する池側との距離を徐々にとらえ始めたのは石井だった。接近戦のシーンが増え、連打を見舞った。会場が一気に沸くと、池側は両手を広げて「効いていないアピール」をした。石井はさらに接近戦を仕掛け、ワンツーからのコンビネーションとアッパーで池側を削っていった。終盤に入り、池側の攻撃の精度は落ちないものの、疲れが見え始めた。石井の猛攻に下がりながら得意の左ストレートを放った。
前半をリードした池側を後半に石井が追い上げる形となり、判定は77-75、76-76が二者でドロー判定となった。

第3試合
スーパーバンタム級8回戦

チャイワット・ブアトクラトック(タイ)
45戦38勝(25KO)7敗

中嶋一輝(大橋)
15戦13勝(11KO)1敗1分(勝者)

12戦のうち10KOとデビュー戦以来、KOの山を築き上げてきた中嶋。世界を見据えていたが2021年、栗原慶太(一力)にKO負けをして一時は引退も考えたと言う。しかし、ここで終わるわけにはいかないと奮起。現在、3連続KO勝利と着実に力を上げた。対するはWBCインターナショナルフェザー級王者チャイワット。再び世界挑戦へ狼煙を上げるのに相手に不足はない。

スタンスを大きくとるサウスポーの中嶋に対し、チャイワットは背中を弓形にして懐深く構えた。背筋の盛り上がりが目立ち、時折スイッチを織り混ぜた。互いに小刻みに前手で探り合う、静かな立ち上がりとなった。キレのあるジャブを放つ中嶋に、チャイワットは右フックを合わせた。左ストレートから大振りのフックを皮一枚で避ける中嶋も、ストレートのフェイントから右ボディが決まった。チャイワットの独特のリズムに警戒する中嶋だったが、右フック、ストレート、打ち下ろしの連打に動きが止まった。さらに圧を強めてくるチャイワットに、中嶋も右フックで応戦した。

観衆も緊迫するやりとりを見守った。4Rにはチャイワットがフェイントで中嶋の右を誘い、左フックでダウンを奪った。尻もちをついた中嶋。ダメージが気になるところだったが、立ち上がりにダメージの蓄積は見てとれなかった。チャイワットは中嶋のガードの上から、左の強打を打ち込んだ。さらに5Rでチャイワットの左右のフックで中嶋が再びダウン。序盤、中嶋がボディを仕留めていた有効なコンビネーションを読み切り、打ち終わりのタイミングを狙われた形になってしまった。会場は静まり返り、苦しい後半戦が予測された。

チャイワット・ブアトクラトック VS 中嶋一輝

中嶋は警戒しながら、体で柔らかくリズムを刻みリングをまわってタイミングを測った。8R、距離を詰めて右ボディを叩き込むと、チャイワットは嫌がってクリンチ。防戦一方となりクリンチとホールドで減点。中嶋の勢いは止まらない。ロープに追い詰めてフックからボディまで的確に打ち込んだ。チャイワットの手が出なくなったところでレフェリーが割って入り試合を止めた。8R2分18秒中嶋のTKO勝利。試合時間残り42秒だっただけに、レフェリーのストップに異議を呈するチャイワット陣営ではあったが、最後は互いにリング中央で称えあった。

第2試合
48.0キロ契約 8回戦

小浦翼(E&Jカシアス)
18戦15勝(10KO)2敗1分

アルアル・アンダレス(フィリピン)
18戦14勝(6KO)2敗2分

負傷判定ドロー

元OPBF東洋太平洋ミニマム級王座の小浦。三度の防衛に成功するが2019年に陥落し、前回2021年のWBOアジア太平洋ミニマム級王座挑戦では重岡 優大(ワタナベ)に判定で敗れている。現世界王者・谷口将隆にも判定勝利を収めている実力者だけに、絶対に落とせない一戦。この試合は通過点と言い切り、WBO世界ミニマム級8位アルアルを相手に圧倒的な試合運びをしたいところ。

小浦翼 VS アルアル・アンダレス

試合開始早々からアルアルのオーバーハンドも読み切ったのは小浦。ジャブを突き、ボディを入れながらタイミングを測った。リズムをつかみガードを上げて接近し始めた2R。偶然のバッティングで小浦が右目を負傷。ドクターストップがかかり、2R38秒負傷判定ドロー。

第1試合
スーパーバンタム級6回戦

冨田風弥(TRIBE SHIZUOKA)
13戦7勝(2KO)6敗

坂本佳朗(本多)
8戦6勝1敗1分(勝者)

冨田は181センチの長身で元全日本バンタム級新人王。現在キャリア初の連敗から脱出したい。対する坂本は167センチとその身長差は14センチ。IQ頭脳ボクサーとも呼ばれる坂本がどう攻略するのかが見所。

冨田風弥 VS 坂本佳朗

序盤から冨田はリーチ差を生かし、ジャブから相手の懐にボディストレートを叩き込んだ。予想通りに坂本は長距離に苦戦し、タイミングを測る時間を要するスタートとなった。冨田はボディストレート、右フックでペースを握った。坂本は先手ではなく相手の出だしに合わせたカウンター狙いの戦略だ。リングを大きく使う冨谷に対し、坂本はガードを固めてプレスをかけ打ち終わりに合わせてストレート、ときどき腕を回転させるなどトリッキーな動きも見せた。後半になると冨田に疲れが見え始め、大振りで空を切る場面が多くなった。このタイミングを待っていた坂本のストレートが冨田の動きを止める場面が増えた。判定は59-55坂本、60-54冨田、 58-56坂本とスプリット判定で坂本が勝利を収めた。手数では冨田、ヒット数では坂本という見方でジャッジの判定が割れた形になった。

著者プロフィール

たかはし 藍(たかはし あい)
元初代シュートボクシング日本女子フライ級王者。出版社で漫画や実用書、健康書などさまざまな編集経験を持つ。スポーツ関連の記事執筆やアスリートに適した食事・ライフスタイルの指導、講演、一般向けの格闘技レッスン等の活動も行う。逆境を乗り越えようとする者の姿にめっぽう弱い。
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