REPORT レポート

「世界4階級制覇を目指す」田中恒成、格の違いを見せ無敗の橋詰将義を5回TKOで下す

橋詰将義 VS 田中恒成

第7試合
WBOアジアパシフィックスーパーフライ級
タイトルマッチ12回戦

OPBFスーパーフライ級王者
WBOアジアパシフィックスーパーフライ級王者
橋詰 将義(角海老宝石)
21戦19勝(11KO)2分

WBOアジアパシフィックスーパーフライ級1位
田中 恒成(畑中)(勝者)
17戦16勝(9KO)1敗

「目指している場所はここではない。」前日の記者会見で、そうハッキリ述べた元世界3階級王者・田中恒成。2020年の大晦日、WBOスーパーフライ級タイトルマッチで4階級王者の井岡一翔(Ambition)に8ラウンドTKO負けと完敗。プロ5戦目で日本人最速の世界王座を奪取し、続けて8戦目で2階級制覇、12戦目で無敗のまま世界最速の3階級を成し遂げた田中にとって、世界チャンピオンになることの厳しさを嫌というほど味わった。昨年12月の復帰戦では、IBF世界スーパーフライ級5位の石田匠(井岡)に競り勝つが、納得のいく試合内容ではなかった。今春、米国合宿を決行。井岡一翔も指導した名伯楽のイスマエル・サラス・トレーナーに師事した。すべては世界王座、再奪還のため。今回のWBOアジアパシフィックスーパーフライ級タイトルマッチも、再び世界に這い上がるためのステップに過ぎないと言い切った。

一方、王者として迎え撃つ橋詰は初防衛戦。田中との対戦が持ち上がったとき、過去最大のビッグネームに闘志を燃やしたと言う。余裕さえ感じる田中の態度に不快感を示し、意地を見せつけたいところ。技巧派のサウスポーで未だ無敗の橋詰は「対策はできている」と自信を見せた。この試合を制した者には、一気に世界戦への道が拓かれる。

1R

始めから距離を取ることなく、ワンツーから飛び込んだのは橋詰。すぐさま左に回り、ボディも確実に仕留めた。主導権を最初から取りに行く姿勢だろう。1Rから果敢にポイントを奪いにいく。サウスポーでリーチ差が13センチあり有利な橋詰の懐は深く、田中の立ち上がりは少し硬い印象。田中の右ストレートも橋詰までは届かない。

橋詰将義 VS 田中恒成

2R

小刻みに体を動かし前進する田中に、足を止めてカウンターを狙う橋詰。このラウンドも田中は距離が測りきれていない。ラウンド後半、さらに距離を詰め、右の打ち下ろしが橋詰にヒット。すかさず橋詰はスリッピングでかわす。サイドステップと前手で距離を制し続けているのは橋詰。

3R

3Rに入ると、最初から田中の回転力とスピードがトップギアで上がった。2Rで距離とタイミングの計測が終わったのだろうか。橋詰をロープに詰めると右ストレート、ダブルフック、ボディで確実に捉えた。近距離からの右ストレートは何度も橋詰の顔面にヒット。反応できない橋詰は責め手に迷いが生じたのか、手数が減り防戦。橋詰の反撃にもクラウチングスタイルでかわし、田中は一切の攻撃を食わず、試合の主導権をにぎりはじめた。

橋詰将義 VS 田中恒成

4R

このラウンドも田中の最大の武器、ハンドスピードを駆使したコンビネーションが冴える。ガードを高く上げてディフェンスに注力するが、橋詰の体は後方へ下がる。口が開き、ダメージを隠しきれない。田中は前進し、ワンツーからのコンビネーション、ダブルボディと追い討ちをかけ続ける。右のかぶせ気味のフックに橋詰の動きが止まり、ゴングが鳴った。

5R

攻撃力とスピードが格段に下がった橋詰に、さらにスピードを加速させて仕留めにかかる田中。ワンツー、左ボディ、右ストレートが何度も被弾し、田中は右目上をカットして流血。グローブで何度も顔を拭いながらも、視線は決して田中から逸らさない。ドクターチェック後、試合再開。ロープを背負った橋詰に田中は怒涛のラッシュをかけた。防戦一方になったところでレフェリーが試合を止めた。5R2分52秒で田中がTKO勝利をおさめた。橋詰は初防衛とはならなかったが、ダウンしてもおかしくない場面でも最後まで立ち続け、タフさを見せつけた。しかし、世界の舞台を何度も経験している田中との実力差は明白だった。

橋詰将義 VS 田中恒成

試合後のインタビュー

(敗戦後から)自分の中でたくさん悩んで、自分の原点に戻って自分の良さを生かして、泥臭くても勝利を掴むタイプなので、これからも攻めて攻めていきます。今は世界チャンピオンに本当になりたいので、応援よろしくお願いいたします。4階級、世界目指して頑張ります。本当にありがとうございました。

井岡戦以来、ボクシングスタイルの再構築も試みた田中。前戦のディフェンシブなスタイルから、今回は原点に立ち戻り、本来の超攻撃型スタイルに確かな手応えを感じたであろう。再び世界の頂を目指す。

第6試合
日本ユース・スーパーフライ級
王座決定8回戦

湊 義生(JM加古川)
15戦10勝(5KO)5敗

神崎 靖浩(倉敷守安)(勝者)
10戦7勝(2KO)2敗1分

現在空位の日本ユース・スーパーフライ級の王座を、過去に新人王に輝いた二者が争う。攻撃型の湊は2018年度全日本フライ級新人王に就き、敗退した2019年9月以来、2度目の日本ユース王座に挑戦する。対する神崎はA級初戦で日本ユース王座戦に臨む。スピードとテクニックを活かしたアウトボクシングスタイルで、2020年度西日本フライ級新人王を奪取。しかし、全日本新人王決定戦では2-1の判定負け。今回のユースタイトル奪還で雪辱を果たしたい。

1R

持ち前の思い切りの良さで序盤から好戦的に出る湊。積極的にフック、ボディ、左にまわりこんで左フックで組み立てていく。ジャブの精度が冴えていたのは神崎。プレスをかける湊に射程圏を譲らない。お互い一歩も引かず、相手の攻撃に手数を増やして反撃する展開。

湊義生 VS 神崎靖浩

2R

湊は懐に一気に入り込んで左アッパー、神崎の右ストレートをかいくぐってからの左ボディで打ち分ける。すぐさま神崎もワンツースリーを好打するが、湊も打ち終わりに合わせ左フック。近距離戦では鋭角な右打ちおろし、右フック、左ストレートをさらに打ち込む。緊迫感ある試合展開に、会場も静まり返る。

3R

精度とスピードの神崎に対して、湊はパワーとフィジカルを武器に体ごと左右のフックを見舞う。3Rに入ると、被弾しているのは湊の印象だが打たれ強さを見せつける。神崎は確実にヒットさせてからステップで攻撃をかわし、確実なポジショニングからワンツーからのコンビネーション。

4R

ジャブの持ち味生かしてきたのは、神崎かと思いきや、中長距離からのノーモーションジャブで何度もヒット奪い始めた湊。神崎の鼻から出血が見られた。近づいてはボディ、アッパーで削り合う消耗戦も展開。

湊義生 VS 神崎靖浩

5R

折り返しの5Rにギアを上げてきたのは湊。しかし、神崎はリードジャブで湊の動きを封じる。終盤、神崎がワンツーからのフックの連打で見せ場をつくる。近距離の消耗戦が続き、お互いに苦しい局面。

6R

6Rは駆け引きのラウンドになった。お互い前手で探りあい。距離が近くなると神崎の左フックがヒット。あらゆる角度からキレのある左ジャブを繰り出す。湊もワンツースリーで追いかけるが、疲れが見えてきたのか、追い足が届かない。

7R

7Rでも追い続けるのは湊。距離で勝負したい神崎に対して、少し強引にでも前に出続けて勝機をこじ開けたい湊。クリンチからボディを叩き込み、アッパーで崩すが、互いに後退することはない。

湊義生 VS 神崎靖浩

8R

ついに最終ラウンド。切れ味が落ちない神崎のジャブで湊の顎が何度も上がった。左右のフックでさらに追い討ちをかけると、湊の動きが止まった。接近戦でも優勢なのは神崎。このままゴングかと思いきや、湊が最後に力を振り絞り、コンビネーションの勢いが神崎を飲み込む。劣勢から一気に息を吹き返した湊。迎え撃つ神崎ともども、どちらかが倒れてもおかしくないスリリングな打ち合いのまま、ゴングが鳴り試合が終了。

77-75が一者、78-74が二者の3-0で神崎が悲願のユース王座を勝ち取った。

試合後のインタビュー

これまでの練習がキツくてめげそうになったんですが、アマチュアからやってきて、タイトルを取ったことがなかったので、全日本新人王は負けてしまったのでユースのベルトを取ることができてうれしいです。これからも、岡山も盛り上がるようにもっともっと自分も強くなって次のステージにいけるようにしますので、これからも応援よろしくお願いいたします。

第5試合
58.0㎏契約8回戦

日本フェザー級12位
松本 圭佑(大橋)(勝者)
4戦4勝(4KO)

ナクハリン・ハンギュ(タイ)
5戦4勝(2KO)1敗

今年2月に予定していた伊集盛尚(琉豊BS)との試合が右拳の負傷で延期。4月に再設定されたが、今度は伊集が体調不良で中止となり、エキシビジョンへの変更を余儀なくされた。約半年ぶりの試合で迎え撃つのは初の外国人選手。不完全燃焼の期間を、左手の強化に勤しんできたという、その仕上がりに注目だ。

1R

若干19歳のナクハリン。アップライトの構えからガードを固め、前足でリズムを取るタイ人独特のリズムを刻む。早々にワンツーの強打でナクハリンを後退させた松本。すかさずワンツーからの左ボディを叩き込むとナクハリンの動きが止まった。コーナーに一気に追い詰め、ワンツー、ボディの連打。ナクハリンが苦悶の表情で体を傾けるとレフェリーが試合をストップ。圧倒的な差を見せつけ、松本が1R42秒のTKO勝利をおさめた。

松本圭佑 VS ナクハリン・ハンギュ

試合後のインタビュー

試合の内容は自分思っていたより早く終わってしまって、言葉が出てこない。自分がレベルアップできる練習内容を積み重ねてきて、左を強化してきたので今日の左ボディは出せたのかな。今日の試合だと実力が測れないと思うのですが、一戦一戦積み重ねて世界チャンピオンになりますので応援よろしくお願いいたします。

第4試合
スーパーウェルター級8回戦

日本スーパーウェルター級6位
安達 陸虎(大橋)
19戦16勝(12KO)3敗

加藤 寿(熊谷コサカ)(勝者)
22戦10勝(7KO)10敗2分

2017年度西日本新人王座に輝いた安達は、さらに上を目指すため2020年に名門大橋ジムに移籍。しかし、昨年3月の日本ユース王座決定戦では1RTKO敗退を喫した。悔しさをバネに現在2連勝中。さらに波に乗りたい今回の一戦に挑む。立ちはだかるのは、試合翌日に37歳の誕生日を控え、負ければボクシング引退が懸かる加藤寿。ここは是が非でも安達を下し、ランキング入りで首の皮をつなぎたい。ボクシング歴18年の老獪さを強みに、攻撃型の安達を攻略できるのか。

安達陸虎 VS 加藤寿

1R

立ち上がり、力みがないのはサウスポーの加藤だった。軽やかな上体の動きとフットワークでリングをサークリングして安達に的を絞らせない。ボディストレート、左フックと的確にポイントを奪っていく。ガードを高くしながら、プレスをかけ続けジャブ、ストレートを繰り出す安達だが、加藤はしなやかにかわしていく。

2R

2Rになると、安達は小刻みにフェイントを入れながらロープ際に加藤を追い詰める。直線的な動きの安達に対して、加藤は上体を右にずらしながらストレート、ボディ、左フック。それでも前進する安達の左ストレートからのコンビネーションで、加藤はロープを背にする。しかし、応戦した左フックが安達の顔面を捉えた。そのまま後方に倒れ込む。立ち上がった安達だが加藤の猛攻からの左ストレートでさらにダウン。レフェリーがすぐさま試合を止め、加藤は2R2分46秒の劇的な勝利でラストチャンスをつかんだ。

定年間近のベテランボクサーが勢いのある若手をマットに沈めた。あまりにもドラマチックな結果に会場は盛り上がりをみせた。一度もランキング入りすることのなかった加藤は、引退の危機から一転、悲願のランカー入りを果たした。

第3試合
62.0㎏契約6回戦

デビュー戦
今永 虎雅(大橋)(勝者)

浜崎 隆広(仲里)
14戦3勝(1KO)8敗3分け

アマチュア10冠という期待の大型ルーキー今永のプロデビュー戦。主戦場はライト級を見据え、今回はプロのテストマッチとも言えるだろう。アマ113勝(23KO・RSC)13敗の輝かしい成績をひっさげ、プロの世界に挑戦する。相手の浜崎は36歳。無骨な戦い方で気合と根性を強みに、下馬評をくつがえす構え。

1R

リング中央で向かい合った両者。身長177センチの今永は浜崎を見下ろす。睨みをきかせ、目を逸らさないのは浜崎。ゴングが鳴り、観客が固唾を呑んで見守る中、今永は広いスタンスで静かな立ち上がり。サウスポーの今永のスピードあるジャブ2発が浜崎のガードをこじあけるようにヒット。今永の技術の高さに会場からどよめきが起こる。鋭角なアッパーで浜崎のガードの上からも確実に顎を捉えていく。浜崎の動きは少し硬く、今永のパンチに反応ができない。体当たりで右のオーバーフックを放つが空を切った。

今永虎雅 VS 浜崎隆広

2R

2Rに入ると、今永のノーモーションのジャブがさらに精度を増した。浜崎は反応が遅れ被弾を許す。さらに左ストレートが浜崎の顔面を捉え、ダウン。
すぐに浜崎は立ち上がり首を振る。距離をゆっくり詰めて、ジャブ、アッパー、フックのコンビネーションで浜崎を確実に打ち崩していく。高いガードで接近した浜崎に左フックをテンプルに見舞い、浜崎が膝をつく。すぐに立ち上がるがダウンカウンドを取られたところで、セコンドがタオルを投入。試合を止めた。今永は2R2分49秒のKO勝利でデビュー戦を飾った。

試合後のインタビュー

めちゃめちゃ緊張しました。初めてのプロのリングでグローブも小さくて、練習してきたことも出ず力んでしまいました。(アマチュアのプレッシャーは)自分では考えないように、アマチュアとは違うと考えて用意してきました。まず、浜崎選手ありがとうございました。自分のボクシングができずに良い勉強ができました。世界の強豪と戦えるようにもっと練習を頑張ります。

第2試合
ライトフライ級6回戦

内田 勇気(KG大和)(勝者)
16戦7勝(1KO)9敗

桜井 昌幸(川崎新田)
23戦4勝(1KO)16敗3分

内藤大輔に憧れてボクシングを始めた内田はアウトボクシングを得意とする。足を使ってリングを大きくステップしながら相手の攻撃をかわす内田。桜井は時々笑みを浮かべながら近距離戦を挑むが、内田のスピードに順応できず被弾を許す。
2Rに入り、内田はジャブの連打からボディストレートのコンビネーションなどを駆使し、上下に散らす。近距離に持ち込みたい桜井だが、距離が近づけばクリンチの展開。
内田のヒットアンドアウェイの足づかいでラウンドを追うごとにポイントを取っていき、桜井はなかなかリズムがつむことができない。最終ラウンド。左の差し合いでは若干桜井が優勢になるが、接近戦では内田がガードの合間をアッパーで打ち上げる。桜井のセコンドからも「時間がない。前に出ろ」と指示が飛ぶが、ポイントを確実にとった内田を59-55が一者、60-54が二者支持し、3-0で勝利。

内田勇気 VS 桜井昌幸

第1試合
ライト級4回戦

デビュー戦
小川 魁星(伴流)

佐藤 友規(パンチアウト)(勝者)
3戦2勝(1KO)1敗

PXB公認の次世代ボクサーを発掘するプロジェクト「ボクサーズロード」。映像配信サービス「ひかりTV」で独占配信されてきた。全国のボクシングジムから大橋秀行会長によって選ばれた8選手から最終審査を通過した、佐藤と小川が激突する。勝者には賞金120万円が贈られるというビッグプロジェクト。佐藤友規は平岡アンディの父親でありトレーナーのジャスティス・コジョ氏が指導についた。スパーリングではWBOアジア王者・平岡アンディとも拳を交え、トップの実力を否応なく味わった。

一方の小川は「練習嫌い」を自称し、週2日トレーニングでも勝利をつかめると口にしていたZ世代。しかし、小川を指導したのは八重樫東など世界トップクラスのボクサーを指導してきた名伯楽・松本好ニ。ボクシングに対する視座を変えて迎えるデビュー戦を白星で飾れるか。

小川魁星 VS 佐藤友規

両者は最終審査のスパーリング総当たり戦で拳を交えている。その際は、劣勢だった小川が最後にダウンを奪って勝ち星を得た。再び拳を交える両者は、ゴングと同時にリング中央を陣取り、様子を見合う。サウスポーの小川は前手をのばし、ジャブを上下に散らしていく。左回りの小川に佐藤のオーバー気味の右フックがヒット。小川は決め手を温存しているのか手数が極端に少ない。リング中央で放った小川の左が佐藤を後退させ、打ち合いから佐藤の右が好打。一度小川は持ち堪えたものの2発目の右フックが顎を打ち抜きダウン。2Rに入っても力みからか距離がつかめていない小川。最終ラウンドに入っても佐藤が小川のパンチの軌道をつかみ、コンビネーション、ボディを当てていく。ラスト16秒、小川がラッシュをかけるがゴング鳴り、三者が佐藤を支持、判定勝ちを収めた。

著者プロフィール

たかはし 藍(たかはし あい)
元初代シュートボクシング日本女子フライ級王者。出版社で漫画や実用書、健康書などさまざまな編集経験を持つ。スポーツ関連の記事執筆やアスリートに適した食事・ライフスタイルの指導、講演、一般向けの格闘技レッスン等の活動も行う。逆境を乗り越えようとする者の姿にめっぽう弱い。
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