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- レポート(「PXB PHOENIX BATTLE 87」第1試合~第6試合)
武居の鮮烈な右フックが炸裂。
第6試合
スーパーバンタム級10回戦
武居 由樹(大橋)(勝者)
3戦3勝(3KO)
日本スーパーバンタム級16位
河村 真吾(堺春木)
26戦15勝(8KO)7敗4分
元K-1スーパーバンタム級の王者からボクシングに転向し、デビュー以来3戦全1ラウンドKO勝利というインパクトを見せつけた武居。競技転向は難しいと言われていた前評判を打ち崩し、今やボクシングファンも期待する新星と言っていいだろう。
今回も大橋会長は1ラウンドKO連続勝利の記録に期待を寄せるが、本人は“強さ”から“上手さ”へのシフトチェンジを見てほしいとも言及。
対する河村は3度のタイトル挑戦経験もある日本スーパーバンタム級のランカー。しかし、2019年以来勝ち星を得ていない。武居との試合オファーは即決。ボクシングキャリアで上回る実力を見せつけたいところ。初回ラウンドから目が離せない一戦となった。
1R
サウスポーの両者。ガードを固めながら、プレスをかけて前進する河村。武居は中長距離を保ちながらステップからの多彩なジャブを繰り出す。左ボディ、左フックからの右フックの好打がヒット。会場からは武居の高い技術に歓声が上がる。緩急をつけた武居のステップインに河村も反応。しかし、武居は右フックを起点にポジションを変えながら反撃をかわす。1RTKO勝利が期待される出だしであったがゴングが鳴る。
2R
武居は柔らかく上体を揺らしながら、飛び込んでからの右フック。ジャブの差し合いでは河村も下がらない。武居はタイミングを読んでからの左ボディを好打させると、河村のジャブに合わせたカウンターの右フックを見舞う。河村はそのまま後ろに倒れ込みレフェリーが試合を止めた。2R1分22 秒、圧倒的な強さを見せつけた武居のTKO勝利。デビュー戦以来、4試合全TKO勝利の記録を更新した。
試合後のインタビュー
試合後、武居は「足立区から来た大橋ジムの武居です。河村選手、ありがとうございました。1Rはそんなに行かないつもりでいて、いろんな戦い方を考えていたのですが、2Rに行ってしまいました」と笑顔で話し「本当にここからだと思うので、K-1から応援してくれる人たちもボクシングファンの方も、僕の夢に乗っかってこれからもついてきて下さい」と今後への意気込みを述べた。
「記録にはこだわらず、長いラウンドでも戦えるところを見せる」と述べていた武居だが、始まればファンの期待に応えるような早期決着。謙虚なコメントとは裏腹に、元世界3階級王者の八重樫東トレーナーの指導と共に世界への駒を着実に進めた。ランキング入りしたからには、さらなる強豪が立ちはだかる。武居の言葉通り、頂点への道のりはまだまだ続く。
第5試合
ウェルター級8回戦
佐々木 尽(八王子中屋)(勝者)
12戦11勝(10KO)1敗
マーカス・スミス(平仲BS)
9戦7勝(7KO)1分1敗
KO決着率91%と驚異の破壊力を持つ佐々木だが、前回昨年10月のWBOアジア・パシフィック、日本スーパーライト級王座決定戦では1.8キロ超過で計量失格。試合は行われたもののTKO負けに終わった。今回から階級を一つ上げて自身初となるウェルター級での復帰戦。世界チャンピオンを目標に掲げる佐々木としては「破壊王」の異名を取り戻し、着実にランキング入りしたい。立ちはだかるマーカスは難解で独特のステップとパワーを強みに、勝利はすべてKOというハードパンチャー。マーカスのリズムを佐々木は豪腕で打ち崩せるのか?
1R
開始早々から強打のジャブを打ち込み、低い体勢からのボディ攻撃は佐々木。サウスポーのマーカスは上体を柔らかくさせ、前手を伸ばしながら距離を取る。佐々木はやや強引ながらもワンツー、左フックで圧力をかけて追い続ける。お互いに様子を見合う展開。
2R
距離を取り続けるマーカス。佐々木は体を上下にゆらしてプレスをかけ、コーナーにつめてワンツー、ボディを打ち込むが、マーカスは首を振りながらサイドに回る。前手を伸ばし佐々木を入れない姿勢を崩さないマーカスはラウンド終わりに、試合中に声を出していることにレフェリーから口頭注意を受ける。
3R
佐々木は序盤からプレスをかけ続けるが、マーカスは一切応じない。展開を変えようと、佐々木はコーナーに追い詰め、接近戦からかぶせ気味の左フックを連続してヒットさせる。ロープを背負ったマーカスも額をつけ佐々木のコンビネーションにフック、ボディで応戦。
4R
一発一発に重みのある左ジャブでさらに距離を詰め始めた佐々木。ロープに追い込んでは、額を付けた接近戦に持ち込む。佐々木の左ボディが何度もヒットし、マーカスは嫌がるように上体を預ける。佐々木はしつこくボディを打ち続け、マーカスは後退。応戦してジャブを出すも、スピードとパワーが格段に落ちた。
5R
マーカスは右ジャブ、フックで距離を取りたいが佐々木の勢いを止めることができず、後退一方。佐々木は勝機を逃すまいとコーナーにつめて何度もボディに強打を打ち込む。さらに左フックからの右フックを好打、下がるマーカスに連打で仕留めにかかり、マーカスが防戦一方になったところでレフェリーが試合を止めた。佐々木は復帰戦を5R2分49秒のTKO勝利で飾った。
試合後のインタビュー
試合後に「前回、自分は犯してはいけないミスをしてしまい、一度ボクシングを止めようとも思ったのですが、こんな僕に居場所を与えてくれたトレーナー、チーフ、家族、大橋会長、仲間たちに感謝したいと思います」と会場を見渡しながらコメント。「ウェルター級では、日本人は通用しないって言われているので、フィジカル的なトレーニングをしていない状態ですが、今の僕じゃ無理かもしれませんが、期待して、佐々木尽の名前を覚えていてくれたらうれしいです」と新しい階級での挑戦に意欲を示した。
復帰戦で勝利を飾り、日本人未踏のウェルター級で世界を目指すことを公言。まだ荒削りな部分は否めないが、伸び代のある新鋭の成長に期待がかかる。
第4試合
フェザー級8回戦
第4試合は松本圭佑(大橋)と対戦予定だった伊集盛尚(琉豊)が体調不良のために救急搬送され、19日に試合を辞退したことが発表された。この試合は中止となり、松本圭佑と石井渡士也(REBOOT.IBA)によるエキシビジョンマッチ(2ラウンドの公開スパーリング)が行われた。
松本 圭佑(大橋)
4戦4勝(4KO)
石井 渡士也(REBOOT.IBA)
6戦5勝(3KO)1敗
松本は、プロボクシングトレーナー最高の名誉「エディ・タウンゼント賞」を受賞した父・松本好二氏がトレーナーを務め、親子二人三脚で功績を築いてきたホープ。ノーモーションの左ジャブを起点に一気に打ち崩すスタイルが魅力である。
急遽のオファーを受けた石井は、井上尚弥をはじめ世界王者とのスパーリングを重ね、着実に実力をつけている強打者。エキシビジョンマッチでレベルの高い両者が向かい合う。
エキシビジョンマッチはヘッドギアをつけ、2分2Rで行われた。
1R
松本は上体の高さを変えながら伸びのあるジャブで前に出る。身長差を生かし得意の中長距離を保つ。石井はジャブから距離を詰めてワンツーの強打を見せつける。
2R
互いに加速したジャブからの多彩なコンビネーションが交差。松本はじわりじわりと圧力をかける。石井もジャブからのコンビネーションで松本のガードを上げさせるが、松本は打ち終わりを狙ったワンツーからボディ、攻撃をかいくぐってアッパーを放つなど高度な技術力を披露した。
第3試合
スーパーバンタム級6回戦
竹田 梓(高崎)(勝者)
6戦5勝(5KO)1敗
木村 元祐(JM加古川)
11戦3勝(1KO)6敗2分
デビュー5勝5KOと勢いがあった竹田は、昨年9月の武居由樹との試合で1R負けの苦渋をなめる。ロングリーチから放たれる一撃必殺で復活の狼煙をあげるか? 対する木村は5連敗を喫しているだけに是が非でも勝ちたい一戦。
1R
サウスポースタイルからの変幻自在な攻撃が特徴の木村。スタンスを大きくとり、低い姿勢から予測不能なジャブの軌道で的をしぼらせない。竹田はガードを固めながら木村のタイミング、スピードを測る。
2R
独特な木村のリズムに突破口を見出せない竹田は距離を詰め始める。コーナーに寄せて連打を放つが、木村はステップでかいくぐる。時々スイッチをしながら足を使う木村は、不意をつくストレートで竹田を捉え、ステップしながらの右フックが決まる。
3R
なかなかギアを入れられない竹田。前手で距離を取り、後ろ重心の木村が出すノーモーションの右ストレートが竹田にヒット。竹田も狙い定めた右のフックが決まる。お互いに相手の出だしを伺い一撃狙いの展開。
4R
探り合う場面が目立つ。竹田は木村をコーナーに詰めるが、木村はコーナーを背にしても左ストレート、右フックとタイミングを測った攻撃で隙を与えない。
5R
後半に入っても木村のリズムを切り崩せない竹田。打っては組みつく木村の戦法に反撃の機会を失う。
最終ラウンド
ステップで回り込む木村を捉え、ラウンド早々にダウンを奪った竹田。すぐにコーナーに追い詰め、右フック、ストレートをヒット。攻撃のタイミングに合わせて放った左フック一閑で木村の顎を打ち抜く。木村はマットに崩れ落ち、レフェリーが試合をストップ。竹田が大逆転の1分43秒TKO勝利をおさめた。
第2試合
フライ級6回戦
横手 太嵐(石川ジム立川)
10戦7勝(3KO)3敗
川崎 智輝(SUN-RISE)(勝者)
3戦1勝2敗
1R
リーチ差を武器に前手を巧みに動かす川崎。横手は左のジャブ、フック、ボディのコンビネーションから相手の懐に入り、強打の左フックで仕留めたい。
2R
中から切り崩したい横手に、川崎は角度をつけた打ち下ろしの右フックで横手の動きを止める。スピードある右ボディ、フックと上下に打ち分ける川崎に、横手も左ジャブ、左フックで応戦する。
3R
中長距離を保ち誘い込むスタイルの川崎に、距離をつぶして大振りの右フックは横手。被弾しながらも前に進み、飛び込んでの左ボディに、川崎は左フックを合わせる。途中、川崎の左フックが空を切り、合わせて放った横手の左フックが好打。川崎の足元がぐらつく場面も。
4R
ステップインからの攻撃で確実にポイントを取る川崎。クロスカウンターが交差するシーンが目立つが決定打にはならず。
5R
打ってはサークリングする川崎を、横手が一方的に追うものの追い足が及ばず。逆に被弾する展開が目立つ。
最終ラウンド
川崎はワンツーの連打で攻勢。横手も下がらずにじりじりと前に出てボディを打ち込み、川崎の動きを一瞬止めるが仕留めるまでには至らず。
的確なヒットポイントと手数が優勢となり、3-0(58-56が二者、59-55一者)で川崎が判定勝利をおさめた。
第1試合
スーパーミドル級4回戦
ダン・ディー・ディリンジャー(大橋)(勝者)
1戦1勝
上村 周平(名古屋大橋)
デビュー戦
日本ボクシング界不毛の階級、スーパーミドル級。元Jリーガーという異色の経歴を持つダンが迎え撃つのは、アマチュアMMA経験をバックボーンに持ち、今回がデビュー戦の上村。圧倒的なフィジカルを武器にする両者だけに、KO必至の試合展開が予想される。
試合レポート
ゴング開始とともに、前に出たのは上村。ダンのワンツーからのフックが上村の顔面を何度も捉える。上村も打ち終わりを狙ったストレートも打ち込む。お互いに相手の出だしを伺い、様子見の展開が続く。
ガードを固めてジャブを単発で放つ上村。ダンはスイッチをしながら的をしぼらせない。お互いにスタミナ不足からか、ラウンド中盤以降は手数が減り、単発の攻防が目立つ。
最終ラウンド。ダンの右フックが上村の顎を打ち抜きダウンを奪う。レフェリーが試合を止めて、ダンが4R50秒のTKO勝利をおさめた。
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