REPORT レポート

両者一歩も引かぬ大激闘! ドロー判定で古橋が日本タイトルを薄氷防衛

古橋 岳也 vs 久我 勇作

第5試合
日本スーパーバンタム級タイトルマッチ10回戦

日本スーパーバンタム級チャンピオン
古橋 岳也(川崎新田)(判定引き分けによりタイトル防衛)
37戦28勝(16KO)8敗1分

日本スーパーバンタム級1位
久我 勇作(ワタナベ)
26戦20勝(13KO)5敗1分

約1年の時を経て互いに1戦の勝利を挟み、今回は立場を入れ替えて再度雌雄を決する時がきた。2021年1月22日に行われた前戦では、5回公開採点で久我リードの中、8回古橋がボディにパンチを集め、9回にレフェリーストップのTKO勝利。古橋はプロデビュー14年目、念願の日本タイトル・新チャンピオンに輝いた。続いて2021年8月に行われた、初の防衛戦。A級2戦目タイトル初挑戦の花森成吾(JBS)を強打の右ストレート、右クロスで実権をにぎり、3回1R12秒と圧倒的な力の差を見せつけ挑戦者を退ける。一方久我も再起を誓い2021年10月、田村亮一(JBS)に判定で勝利。前回同様、激しい打撃戦が予想される中、試合早々にプレスをかけ前に出て行ったのは王者・古橋だった。

1R

挑戦者・久我が中央にポジションをとり、王者・古橋が小刻みに上体を揺らしながらステップをし、ジャブ、ストレートを打つ。お互いジャブの差し合いから、久我のストレートボディが古橋を的確にとらえ、左フックの好打を打ち込む。前に出続けロープに詰めて連打を放つのは古橋。様子を伺いながら強打を打ち込む久我。1Rから打ち合う場面が見られ、白熱したラウンドに会場から拍手が起こる。

古橋 岳也 vs 久我 勇作

2R

ロングリーチから距離を詰めて前進する古橋。ジャブからボディストレートのコンビネーションで久我にロープを背負わせる。ガードを固めてしのごうとする久我は、古橋の打ち終わりを狙いリードを許さない。互いに出端を折るジャブを放ち探り合いの駆け引きの中、組み合ってから右のクロスカウンターが交差し合う。

3R

ステップを使い左右回りながら、左ジャブを放つ古橋。しかし久我の力強いワンツーが古橋を捉える場面も目立つように。古橋は中長距離をとってのフェイントの掛け合いで突破口を探り、ボディとアッパーを織り交ぜたコンビネーションから久我の動きを止める。古橋が懐に入ってきたところを狙い、クロスの右、フックで応戦する久我。しかし古橋も右ストレートを打ち込む。交差する場面が多く見られ、一瞬たりとも目が離せない展開。

4R

左のジャブ、左ボディで組み立ていく久我。向かい合い、久我に「来い」とグローブで招く仕草を見せるのは古橋。組み合っての接近戦、古橋は左右のアッパーを打ち込み、強烈な左右のボディをしつこく叩き込んでいく。たまらずクリンチする久我。しかし、打ち終わりに狙い定めたオーバーフックで古橋の攻撃を止める。古橋の右眼上がカットし鮮血がみえる。

古橋 岳也 vs 久我 勇作

5R

接近戦、中長距離、共に一歩も引かぬ両者。ふりかぶりの右フックで古橋の動きを久我が止めると、ガードを固めた上からも強烈なボディを叩き込む。右ストレートの好打からのクリンチ。古橋もボディ、ワンツーと手数をゆるめない。ロープ際に久我を押し込めると、右ストレート、コンビネーションで久我の頬を的確に捉える。しかしフック、アッパーと回転力を上げて久我も返す。久我の勢いに距離をとり体勢を整える古橋。一方が打ったら、もう一方が必ず打ち返し、互いにヒットする場面が多く見られる。
ラウンド終わりに公開された採点は49-46、48-47が二者と挑戦者・久我を支持。ポイントでリードを許した王者・古橋は後半にどんな展開を見せるのか。

6R

判定でリードを許した古橋は展開を変えるようにプレスを強める。久我は下がりながらのダブルアッパーをみせると左ボディ、右フック。古橋は右にまわりこみ、左ボディ、組み合ってからも右ボディを打ち込む。離れぎわ右の打ち下ろし、ボディ、アッパーのコンビネーションで久我の動きが止まる場面が見られた。左右のボディ、右アッパー、フックとボディを織り交ぜながら古橋の攻撃は止まらない。ワンツーからのボディで久我がよろめくシーンがあったが、ラウンド終盤に久我もアッパーを放ち、一方的な追撃を許さない。大激闘の展開にラウンド終了後、会場は拍手喝采。

7R

試合開始から前進をする古橋。前回の試合展開同様に、ボディ攻撃に活路を見出した様子。至近距離から執拗にボディへ攻撃をまとめる。久我はたまらず体を預ける様子をみせる。しかし、古橋が左右のボディを見舞えば、力を振り絞り久我もボディを返す。削りあいの展開。ロープに追い詰めて古橋が左右のボディを打ったところに、久我は強いワンツーを打ち、古橋は鼻からの出血が見られる。しかし、古橋は手数をあげ、フック、アッパーからの連打、右フック、ストレートで久我の体が揺らぐ。ダメージがある様子をみせる久我だが、粘り強さをみせ一方的な展開に持ち込ませない。

古橋 岳也 vs 久我 勇作

8R

古橋の執念が見えたのはこのラウンドだった。力を振り絞るように8回に入っても開始早々から両者前に出続ける。古橋は右ストレートから執拗にボディまで組み入れたコンビネーションで確実に久我を削っていく。ロープ際でフック、ボディと猛攻を仕掛け、防戦一方の久我。しかし、打ち終わりを狙ったフックを繰り出しなんとか食らいつく。ここからさらに底力を見せる古橋。ガードの上から叩き込む左フックから連打を浴びせ、好機を見出した古橋は仕留めにかかる。
ここまで全ラウンド打ち合いの展開。両者、終盤でも未だ無尽蔵のスタミナと驚異の粘りで、圧巻の様相。

9R

ここにきて開始早々に前に出たのは久我。前ラウンドでポイントをとられ実権を握り返したいところ。フック、アッパーからの回転が落ちないコンビネーションで強打の右ボディを叩き込む。古橋の右フックに久我の左フック、互いの好打が交差するスピーディーな展開。前ラウンド善戦していた古橋の手数がここにきて減る。踏ん張りどころで中長距離からのストレート、クリンチからのアッパー、ボディは古橋。接近戦からの打撃戦でゴング。

古橋 岳也 vs 久我 勇作

10R

最終ラウンド。どちらがリードしているのか甲乙つけがたい内容に、会場は固唾をのんで見守る。最終ラウンド、リング中央。両手を合わせる両者。ゴングと同時に接近戦からの打ち合い。額をつけ合わせ古橋が左右フックの連打を放てば、久我は距離をとる。追ってくる古橋に久我は左ボディを見舞う。すかさず左右ボディを返し、右のストレートで久我の動きを止める。最終ラウンドでも執拗にボディを攻め続ける古橋。肩で息をする久我だが、最後まで気持ちが切れることなく、力を振り絞るように左右のフック。諦める様子は一瞬も見せなかった。終了のゴング。万雷の拍手が会場に鳴り響く。結果は一人が96-94で挑戦者・久我を支持するものの、二者95-95のドロー判定で、2ポイント差の勝利規定に達しなかったため、王者・古橋が2度目の防衛成功となった。

古橋は試合終了後、「かなり複雑です。前回も勝ったけれどもボコボコにやられて、今回もボコボコにやられて。強い久我さんに勝つために。試合が決まってから正直怖くて、久我さんのことを尊敬しないわけないじゃないですか。久我さんが同じ階級で(再戦が)あるかもしれないですけれども、尊敬する久我さん、周りも認める選手と引き分けですけれども防衛できたことは価値あると思っています。こんな試合ですが、アジアのベルト狙っていきたいです」と、久我への尊敬の念を述べると涙ぐむように語った。

大番狂わせの圧勝KO劇で向山がランカー清田を下す

第4試合
ライト級8回戦

日本ライト級6位
清田 亨(大橋)
15戦11勝(8KO)4敗

向山 太尊(ハッピー)(勝者)
8戦6勝(3KO)2敗

アマチュア経験はなくプロで戦績を築き上げている、名門・大橋ジムでは珍しい叩き上げボクサー清田。昨年6月に念願のランキング入りを果たし、さらなる上を目指す清田にとって負けられない1戦。向山は髪をリーゼントにしていた過去を持つ不良時代があったという。長い手足から放たれる予測不能な攻撃スタイル。A級(8回戦以上)初挑戦の向山は、試合予想の大半が清田を圧倒的に支持する展開の中、どう打ち崩すのか注目の一戦。

1R

サウスポースタイルの向山は、開始早々、ノーモーションの左ストレートが完璧なタイミングで清田の顔面を捉える。清田の足が一瞬浮く。間をおかずに柔軟な身体で右サイドにまわりこんでは、左ボディを見舞う。ダメージが回復していない様子の清田。ペースをつかめずにいたが、ラウンド終盤にストレートを好打。

清田 亨 VS 向山 太尊

2R

向山のしなやかに伸びるジャブ。柔らかい上体の動きから放たれるノーモーションの左ストレートを武器に、清田の顔面をコツコツととらえていく。清田はまだ距離がつかめずにいる。向山のタイミングを見計らったように放った左フックが、清田の顎をとらえダウンを奪う。起き上がるものの、向山は一気に距離を詰め、左フック3発を打ち込んだところでレフェリーが割って入り試合を止めた。
以上の結果から2R1分12秒で、向山は番狂わせのTKO勝利をおさめた。

リング上で向山は「こんな感じですかね。(前評判では不利だったが)俺の方が強かったんじゃないかなって。負けるとは思っていないんで、最初から行くだけです。どんどん実績積み上げていくんで、早くトップ戦線に行けるように日々精進していくんで応援よろしくお願いいたします」と飄々とした立ち姿でリングを後にした。
危ない展開を一切見せることなく完勝と言っていい勝ち方。所属ジム「ハッピーボックス」プロ選手1号として、圧巻の試合を見せつけた。

第3試合
スーパーフライ級8回戦

元日本フライ級チャンピオン
黒田 雅之(川崎新田)
41戦30勝(16KO)8敗3分

重里 侃太朗(仲里)(勝者)
3戦3勝(2KO)

2年8ヶ月間の休養期間を経て、ようやくリングに戻ってきた黒田は41戦の大ベテラン。19年5月に当時のIBF世界フライ級王者モルティ・ムザラネ(南アフリカ)に挑戦し、判定負けして以来のリング。世界戦経験者であり、元日本フライ級チャンピオンに輝いた実績を持ち、今回の再起戦に全てを懸ける。一方現在3戦3勝の、関西期待のホープ・重里。リオオリンピックを目指していたアマチュア時代、疲労骨折など満身創痍でボクシングを続けていたが、プロに転向。頂点を目指して着々と実力をつけてきた。4戦目にして黒田を相手に迎えることに不足はない。

1R

早々に大振りな右フックを放ったのは黒田。右手前のサウスポースタイルは重里。黒田はリングでの感覚を取り戻すように、フェイントをかけながらボディ、距離をつめて右ストレートの強打を的確に打ち込む。ワンツー、スリーとコンビネーションで距離を取りながら優位な位置を陣取るのは重里。

2R

重里がリードジャブの連打で近づき、距離が近いところでワンツーボディのコンビネーションを打ち込む。左のボディを入れて距離が詰まると、すかさずリードジャブで重里が有効な距離感に立つ展開。黒田はガードを固めた重厚なプレスで、重里をロープぎわに追い詰め重いフックを放つ。サイドにまわりこむ重里。左ストレートが黒田の顔面をとらえ、間髪入れずにワンツー。左ストレートからのコンビネーションが冴え始める。

3R

回転のスピードをあげて、アッパー、ボディを織り交ぜた打ち分けで確実に黒田をとらえはじめた重里。黒田はガードをあげて接近戦に持ち込みたい構え。プレスをかけ続け、ボディを叩き込む。黒田のガードをこじあけようと重里は右の打ち下ろし、アッパーで応戦。

黒田 雅之 VS 重里 侃太朗

4R

重里の左ストレートが黒田の顔面をとらえる。黒田の動きが一瞬止まるが、すぐに距離を詰める。しかし、重里は立ち位置をステップで変えながら距離が近づけば突き放し、攻撃をさせない。ジャブがコツコツを当たり、ラウンド途中、黒田のまぶたから流血が見られた。自身の有効な距離感をつかんだのは重里か。

5R

歩きながらプレスをかける黒田。右にまわりこみ、ワンツー、ボディとコンビネーションで応戦する重里。途中黒田にドクターチェックが入るがすぐに試合再開。開始早々に黒田の右ストレートがヒット。しかし、アッパーの縦軸攻撃からサイドのフックにつなげるなど、打ち崩していくのは重里。しかし黒田も大振りの左から右ストレートで後退させ、逃さない。

6R

ロープ際の接近戦の展開に勝機を見出した黒田は、ボディ、ジャブ、右フックの強打。重里は黒田の攻撃をもらいながらも、なんとかサイドに回り込む。終盤にお互いカウンターを入れあう譲らない展開。パワーと圧力の黒田と、回転力とスピードの重里。

7R

お互い疲れが見え始めたか。打ってはクリンチ、ボディ攻撃での削りあい。ガードを固めた重里にボディからフックを黒田が打ち込めば、反対に重里も黒田に左右ボディを打ち込む。重里の打ち始めに、狙いをさだめた黒田の右ストレートがヒットする場面も。

8R

最終ラウンド。お互いに距離が近いところで打ち合う。黒田の左フック、右ボディ、右のストレート。接近戦になれば体を入れ替え、右アッパーを放つのは重里。ラスト30秒で黒田はワンツーからの連打。重里も足を止めての打ち合い。ゴングが鳴り試合終了と同時に、青コーナーに登って、観客に手を挙げたのは重里だった。
判定は77-75、78-74、79-73と三者、青コーナー・重里を支持。大ベテランを下す大金星をあげた。

第2試合
58kg契約4回戦

池田 健哉(川崎新田)(勝者)

江藤 龍平(八王子中屋)

31歳の池田、21歳の江藤。共にデビュー戦同士の戦い。

1R

池田は上体を柔らかくし、左手を上下させながら探るようにジャブ、ストレートを繰り出す。江藤は長いリーチからジャブを放つが、動きに硬さがある印象。早々に池田の右のストレートが江藤の頬を捉えダウン。立ち上がった江藤は勝機を見出そうと距離をつめた。しかし、ダメージからか足がついていかない。池田がステップで下がる。江藤が追いかけたところに、池田の狙った左ストレートで江藤はバランスを崩した。すかさず池田はストレート、フックの連打で江藤をマットに沈める。1R1分39秒でレフェリーストップ。

池田 健哉 VS 江藤 龍平

第1試合
54.5kg契約4回戦

相澤 正祥(川崎新田)

加藤 勇樹(厚木ワタナベ)(勝者)

現役警察官・相澤と遅咲きボクサー加藤、念願のデビュー戦同士の戦い。

試合開始早々に、加藤が左のオーバーフックで相澤の顔の側面を捉える。ボディを的確に打ち分け、相澤の足が止まる場面もあるが、下がりながら応戦。持ちこたえる。3R目も、お互い足を止めての打ち合い、手数をゆるめぬ展開にデビュー戦とは思えぬ白熱した戦い。会場も緊迫した雰囲気。
最終ラウンド。お互い一歩も引かぬ打ち合いの様相をみせるが、試合序盤から接近戦でボディを執拗に攻めていた加藤の攻撃が功を奏し、加藤は苦悶の表情。結果は三者40-36で、加藤の判定勝利。試合終了後、万雷の拍手が両者に送られるほど、1試合目から好試合に恵まれた。

相澤 正祥 VS 加藤 勇樹

著者プロフィール

たかはし 藍(たかはし あい)
元初代シュートボクシング日本女子フライ級王者。出版社で漫画や実用書、健康書などさまざまな編集経験を持つ。スポーツ関連の記事執筆やアスリートに適した食事・ライフスタイルの指導、講演、一般向けの格闘技レッスン等の活動も行う。逆境を乗り越えようとする者の姿にめっぽう弱い。
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